2008.09.30
『土壌微生物の基礎知識』
![]() | 土壌微生物の基礎知識 (1989/02) 西尾 道徳 商品詳細を見る |
肥料価格の暴騰で、有機肥料や、肥料代の節約法がクローズアップされています。植物工場ならともかく普通の畑で作物を作るのなら、有機肥料はもちろん化学肥料であっても、肥料の効きに大いに関わってくるのが土壌微生物です。
本書は土壌微生物について豊富な図表、平易な語り口で解説してくれますが、読んでいけばいくほど、土壌微生物が農業の多くの場面に関わっていることが分かって、その重要性が理解できます。有機物を分解して作物に吸収させるのも土壌微生物なら、病害を引き起こすのも土壌微生物です。
得体の知れない微生物資材を入れる前に、まずは自分の畑の微生物についての知識を頭に入れることが、環境負荷もコストも少ない農業に繋がるはずです。
2008.07.28
『野菜づくり大図鑑』
![]() | 野菜づくり大図鑑 (2007/11/29) 藤田 智 商品詳細を見る |
家庭菜園者向けの入門書なんですけど、とにかく紹介されている野菜が多くて300ページを超えるボリュームになっています。基本野菜から中国野菜、ハーブまで。一応プロの百姓のつもりですが、聞いたこともない野菜がいくつも載っていました。それらの作り方やレシピ、また野菜作りに共通の技術なども紹介されています。
この手の本は類書がたくさん出ていますが、たいていは中小の出版社や農業分野専門の出版社からでした。しかしこれは天下の講談社。名前で判断するわけではないですが、さすがの編集力だとうならされる点が随所にあります。各野菜の作り方は1〜2ページの小さなスペースですが、そのスペースに写真をふんだんに盛り込みつつ、たとえば連作障害の有無、お勧め品種などの、痒いところに手がとどく情報が凝縮されています。さあ野菜を作ろうと思ってホームセンターに種を買いに行っても、ホウレンソウなどの定番野菜は品種が多くて何を買っていいのか分からないですからね。巻末に野菜と用語の別々の索引があるのもさすが。
あくまで入門書ながら3000円強と少々お高いですが、それだけの値段の価値はある本と言えます。
2008.06.29
フードファディズム―メディアに惑わされない食生活
![]() | フードファディズム―メディアに惑わされない食生活 (シリーズCura) (2007/10) 高橋 久仁子 商品詳細を見る |
産直市場にちょっと珍しい食材を出荷する際、売れるかどうか不安なために(法の範囲内で)健康効果を書いたPOPをつけることがあるのですが、この本を読んで今後そういうことをする際には気をつけないといけないなあと考えさせられました。
フードファディズムの定義は
食べものや栄養が健康と病気に与える影響を過大に信じること、科学が立証した事実に関係なく何らかの食べものや栄養が与える影響を過大評価すること
最近では「健康情報娯楽番組」によるフードファディズム問題がクローズアップされ、それによって番組が打ち切られたこともありましたが、生産者としてこの問題にどう向き合うべきかは難しいところです。これだけ豊富な食材が氾濫する現代において、生産物をコモディティにせず、他と差別化するためには健康効果のアピールも重要になっています。しかしウソ大げさなアピールが消費者の健康を害し、ときには死に至らしめる事例すらあることは本書にあるとおり。
まずは生産技術同様に健康効果に対してもリテラシーを磨いて、その研究結果が本当に有効なのかを見極めること。そしてなによりも、ウソをつかない職業倫理を大切に持っていたいものです。
2008.06.02
『肥料になった鉱物の物語』
![]() | 肥料になった鉱物の物語―グアノ、チリ硝石、カリ鉱石、リン鉱石の光と影 (のぎへんのほん) (2004/03) 高橋 英一 商品詳細を見る |
先日資材屋さんへ「ようりん」を買いに行ったところ、3割近く値上げされていてひっくり返りました。世界的な穀物市場高騰の影響で肥料価格が値上がりしているのはもちろん知っていますが、「ようりん」はリン鉱石から比較的単純な工程でできる肥料なのでダイレクトに値段が跳ね上がったんですね。
この本のテーマは地味もいいところですが、その内容は実にダイナミズムに溢れていて面白い。化学肥料による肥料革命は地球人口の増大をもたらす一大革命だったわけですが、それを支えた肥料、またはその原料が歴史の中で如何に重要な役割を演じたか、そして時にはひとつの地域の歴史を作ったかが、平易な文章で語られています。
チリ硝石を巡っては数年間にわたる国家間の戦争まで引き起こしています。その結果、国境線も変わることになるのですから驚きです。ホームセンターに化成肥料が山積みされているのを見ると忘れがちですが、かつては肥料原料は石油以上の重要資源であり、それは現代も同様であり、そして今後はリン鉱石の枯渇問題も含め、肥料問題はさらに世界的な課題になっていくことを再認識させられました。戦争はごめんこうむりたいですが。
2008.05.30
『ホウレンソウをつくる人々』
![]() | ホウレンソウをつくる人々 (2006/08/23) 三井 和子 商品詳細を見る |
日本列島北から南まで、17のホウレンソウ産地を訪ねたルポルタージュです。どの産地のルポも気候風土から始まって栽培方法、収穫・調整方法、流通の様子まで、その産地のホウレンソウの生まれから巣立ちまでを追いかけています。
栽培方法は、野菜工場的水耕栽培も紹介されていますが、他はその地の風土に合わせた当たり前の栽培方法が多いです。とはいえ各地の気候や消費地との距離が十分に勘案され、熟成された栽培法は大量生産される野菜の当たり前の農業の大切さを思い知らされます。
百姓にとって最も参考になるのは各地の個性ある収穫・調整方法が紹介されている部分ではないでしょうか。ホウレンソウ生産で一番時間が取られるのはその収穫・調整ですからね。









