2012.04.16
『アボカド―露地でつくれる熱帯果樹の栽培と利用 』
![]() | アボカド―露地でつくれる熱帯果樹の栽培と利用 (新特産シリーズ) (2007/03) 米本 仁巳 商品詳細を見る |
アボカドと言えばほぼ100%輸入の果物ですが、なんでも今が旬だそうでスーパーで安く売られていたりファミリーレストランでもアボカドを使ったメニューを展開しています。そんなわけで今シーズン初めて食べてみて興味を持ち、本書を手に取ったのですが、なんと柑橘類が栽培できる温暖な地であれば露地栽培が可能なんだとか。日本で栽培できるとしても沖縄辺りだけかと思っていました。どうしてもバナナやパイナップルなんかと同じカテゴリに入れてしまいますからね。しかし-4℃までなら栽培可能なんだとか。これならまさに柑橘類と同じですね。実際、愛媛県の松山市では最近産地化の動きがあるとか(参照)。
そう分かればワクワクして読み進められます。まずはその成分に驚かされます。カロリーが約190kcal/100g。これはご飯より大きな数字です。脂質を多く含みますからね。しかしそのほとんどは不飽和脂肪酸なのがポイント。そして高タンパク。食物繊維も豊富に含みます。そして糖分は少なめ。まあ他にも栄養豊富と書かれていますが、あんまり個々の成分をクローズアップするのは話半分程度にしておきましょう。ただ、糖分が少ないことで野菜的な使われ方もしますから、用途の可能性は大きいですね。
国内で栽培した場合、品種の関係で主な産地のメキシコ産品種の旬と重ならないようですから、キウイフルーツのような相乗効果が見込めそうなのもいいですね。そして輸送距離がないぶん、おいしさで勝負できそうなのも大きいです。適地適作といいますが、日本も西南暖地なら十分適地に入るのですから。
栽培も摘花・摘果の必要なし、剪定は芯止めして枝を多く出すのが基本と比較的手間はかからないようです。肥料も転作園なら要らないほどだとか。ただ、夏の旱魃には注意の必要がありそうです。無農薬栽培も可能とあります。実際病害虫も少ないようですが、なにより個別の登録農薬がありません。ひょっとして国内で未知の病害虫が発生する恐れはありますが、さしあたっては寒害と旱魃を気にしたほうがよさそうです。
このように、まず少量多品目のひとつに加えてみたくなるような魅力に溢れています。ただ、苗や種の入手という入り口の部分が狭いことが一番の問題でしょうか。スーパーなどでみかけるメキシコからの輸入品種「ハス」種は種を取っても、室内で観葉植物にするのならともかく、本州九州四国での露地栽培には適しません。苗は若干高価ですがネットを探せば見つかりますから、まずは一本から増やしてみるのも手ですね。
2011.11.02
『農業で稼ぐ!経済学』『日本の農業が必ず復活する45の理由』
![]() | 農業で稼ぐ!経済学 (2011/06/28) 浅川 芳裕、飯田 泰之 他 商品詳細を見る |
『日本は世界5位の農業大国』ですっかり売れっ子になった農業雑誌編集者と、説明能力の高さに定評のある若手経済学者の共著です。タイトルには「経済学」とありますが、結構話はいろいろなところに飛びます。シノドスのディレクターをなさっているだけに、飯田さんがご自分の専門分野である経済政策以外にもどんどん発言してゆき、聞き手にとどまりません。もうちょっと経済学寄りの内容を期待していた自分にはそこが逆に物足りないところではあったのですが。
前半のメインは農業経済政策について。浅川さんの『日本は〜』で触れた食糧自給率の話をおさらいして、飯田さんの農業経済政策の話につなげます。飯田さんは近代経済学の王道とも言える、自由競争で経済を成長させそれを原資に厚いセーフティネットを張るという持論を農業にも適用し、今の戸別補償制度がいかに歪んだものかを論証します。
後半は優秀な農家の経営学や国家的マーケティングの話、さらには東日本大震災の農業への影響まで話が及びます。浅川さんが基本イケイケドンドンなので前2者の話はエキサイティングではありますが、読み物以上の価値を見いだせるかは経営者次第。大震災の農業への影響、特に原発事故にまつわるものについては、これは下で紹介する本の該当部分にも当てはまることですが、たとえばセシウムの移行率だとか、手探り状態かつ状況が刻一刻と変わるものですから、基本的な情報以外はあまり参考にはならないかもしれません。
本書の後半、情報部分をもっと敷衍したと言えるのが下の浅川さんの単著です。
![]() | 日本の農業が必ず復活する45の理由 (2011/06/28) 浅川 芳裕 商品詳細を見る |
なんだかブログのようなタイトルがついていますが、ミニコラム集といった感じで、日本農業の復活に結び付けられているものの方が少ないほどです。しかし内容は多岐にわたり、類書より深入りしている部分が多く、面白い。今議論になっているTPPにも多く頁が割かれています。プロ中のプロ農家相手の農業経営誌編集者という著者のポジションからバイアスを読み取る必要がある箇所もありますが、単純な農業礼賛的な本を読むよりは何倍も価値が大きいでしょう。
2011.10.03
『土と微生物と肥料のはたらき』
![]() | 土と微生物と肥料のはたらき (農学基礎セミナー) (1988/06) 山根 一郎 商品詳細を見る |
元々農業高校向けの教科書として使用されてきたものをベースに一般向けに書かれた本書ですが、出版20年以上経った今でも農業大学校の教科書として現役で使用されているなど、この分野のスタンダードテキストの地位を保っています。理由は土壌や肥料についての基礎知識を網羅的かつ必要十分そしてコンパクトで無駄のない記述で体系的にまとめあげているからでしょう。こちらにある目次からでもそれは十分に伺えます(参照)。
20年以上前の本ですので新しい資材や知見などを補充すべき部分はありましょうが、本格的に農業や家庭園芸を学びたいと考えるときにまず最初に手にとるべきテキストです。本書で基本的な概念を学べば以降の学習がスムーズに進むでしょう。また、すでに農業に従事している者も、読めばああこんな論点もあったなと再確認させられることが多いです(わたしもそのクチです)。
2011.07.12
『だれにもできる土壌診断の読み方と肥料計算』
![]() | だれにもできる土壌診断の読み方と肥料計算 (2010/02) 全国農業協同組合連合会肥料農薬部 商品詳細を見る |
土壌診断は栽培の基本に位置づけられるべきにも関わらず、その煩雑さ、項目や数値の難しさ、また土を採取してから診断結果が分かるまでに時間がかかることなどからあまり普及しているとは言えません。かく言うわたしもブロッコリー畑に年に一度実施するかどうかといったところで、これからの課題に挙げている分野です。最近ではこちらやこちらのような自分で土壌診断ができるキットも出ています。病害虫の予防やコスト低減のためにも是非導入したい技術です。
そこで本書を手にとってみたわけですが、これはなかなかの良書です。診断の部に移る前に土壌・肥料の基礎から必要十分にして最小限の説明を試みているのがポイント。EC、CEC、有効態リン酸など分かりにくい用語を丁寧に解説しています。数年前の肥料高騰以来、リン・カリを低減した低コスト型の肥料を推進している全農が執筆を担当しているのですが、単なるパンフレットとはなっていません。
メインである土壌診断のパートにしても、水田と畑の違い、黒ボク土とそれ以外の違いから図表を多用して丁寧に説明しています。土壌診断と肥料設計を結びつける場面ではケーススタディも用意。これ一冊で、土壌診断と肥料設計のひと通りのことは学べるようになっています。もちろん、畑の性質は一枚一枚違いますので実践して読みなおしての反復が必要なのは言うまでもありませんが。
2011.06.20
『イネ科ハンドブック』
![]() | イネ科ハンドブック (2011/03) 木場 英久、勝山 輝男 他 商品詳細を見る |
イネ科植物と言えば、農家だけではなく人類に最も身近な植物です。農家に限っても、稲や麦、トウモロコシを栽培し、ヒエなどの雑草と戦い、さらにはソルゴーやイタリアンライグラス、ナギナタガヤなどを緑肥やバンカープランツとして利用します。
そんなイネ科植物の同定の便にと編まれた本書です。1ページに1品種、特徴的な部分である穂を大きな写真で掲載し、解説を加えています。ざーっとページをめくっていると、普段「種が落ちてまた草が生える」と忌々しい思いで眺めているイネ科雑草の穂の様々に特徴的な幾何学模様がなんとも美しく、魅入ってしまいます。不思議なものです。










